こんにちは!総合商社マンです!ANAが2021年度3月期の第2四半期決算を発表したよ!最近リストラを発表したANAの行方や如何に!?
ANAが20年度第2四半期決算を発表
ANAが10/27の引け後15:00に20年度第2四半期の決算発表を行いました。ANAは公募増資の噂が流れたり、最近では実際にリストラや、従業員の給与を3割削減、また一部の従業員をトヨタに出向させてコロナ禍を凌ごうとするなど、本当に様々な手を打ってこの苦難を乗り切ろうとしています。
もともとJALに比べて財務体質が弱いANAはかなりの苦境に追い込まれている状況です。またANAは今期の年間業績予想については第1四半期決算時点で合理的な算出が難しいということで未公表としていましたが、今回の決算発表に合わせて公表も行っています。
そのあたりも含めて上半期の決算発表内容を早速見ていきたいと思いますよ!
20年度第2四半期決算概要
ANAの2020年度第2四半期決算の概要を早速見てみましょう。
定量実績
まず定量実績です。こちらのスライドをご覧ください。
すごい数字が並んでいます。ポイントを箇条書きしますね。
- 売上高は前年比▲72.4%(1Q時点:75.7%減少)
- 営業利益は▲2,809億円(1Q時点:▲1,590億円)
- 当期純利益は▲1,884億円(1Q時点:▲1,088億円)
2Qの数字は1Qとの合算ですが、1Qと比べると劇的に回復しているわけではないですが、若干数字は改善しているのが分かります。
またこのスライドの右側に旅客数と貨物事業がありますね。この点もポイントを箇条書きするとこちらです。
- 旅客数は国際線は前年比▲96%とほぼ需要が消滅している状況に変わりなし。
- 国内線は上期累計では▲80%であるものの2Qだけだと▲72%と若干改善。
- 貨物事業は上期累計では前年比▲0.6%と若干減少しているものの、2Qだけでは+1.5%に浮上。
これを視覚化してくれたスライドがあるので、こちらをご覧ください。
左上から順番に、国際線は引き続き需要消滅、国内線はGotoトラベルで改善傾向、貨物事業も堅調み右肩推移、ピーチに限っては11月に前年比プラスに転じる見込み。こういう状況であることが分かりますね。国際線がかなりやばいです。
このような状況下、コスト削減に踏み込んでいるわけですが、その内容を見てみましょう。
ポイントを抜き出します。
- 上期だけで▲3,330億円のコスト削減を実施。
- この内訳は変動費▲2,480億円、固定費▲850億円(人件費▲550億円、その他▲300億円)。
ここで重要なのは変動費では無く固定費です。変動費は燃料代も含まれているので、飛行機を飛ばさなければその分燃料代もかからないので、減少して当然です。なので重要なのは固定費をいかに削減するかになるわけですね。
この固定費で多くを占めるのが人件費や保有機材の減価償却費になります。保有機材の減価償却費については機材の売却をすれば一時的に損失を出すことで減らすことが出来るわけですが、人件費についてはリストラをするか、給与を減らすかになるわけです。そして、今回ANAは従業員の冬のボーナスをゼロ、固定給も下げることで、年収ベースで30%減という荒治療を行うことを決断したというわけですね。
財務状況
ANAの財務状況を見てみましょう。JALよりも財務体質が弱いことから倒産の危機?というような情報まで流れていたりしますが、実際のところはどうなのでしょうか。
まずこちらのスライドをご覧ください。
ANAの9月末時点の財政状況を3月末と比較したものですね。ポイントを箇条書きします。
- 自己資本比率は3月末の41.4%から32.3%へ▲9.2%悪化。
- 有利子負債残高は+4,726億円増加し、1.3兆円超え。
- その結果DEレシオは3月末の0.8倍から1.5倍へ急激に悪化。
- 手元流動性資金は+2,135億円増加の4,522億円。
自己資本比率は32.3%へ急速に悪化していますが、これは既に1Q時点で悪化は始まっていたので特段いまさら驚くことではありません。ただし、このまま赤字垂れ流し状態になると危険信号が灯ってきます。
一方、ANAは今回の決算発表と共に適時開示を行い、4,000億円の劣後ローンを発行することを発表しました。劣後ローンというのは借入金である一方、半分程度を自己資本として組み入れることが出来る特性を持っているので、自己資本比率はこれにより改善されることになりますね。
キャッシュフロー
ANAのキャッシュフロー状況を見てみます。
1Qの最悪期には毎月700億円だか800億円が毎月キャッシュアウト(キャッシュバーン)しているという情報もありましたが、9月末時点で手元流動性資金4,522億円に加えて、今回の劣後債4,000億円をゲットしたことで、ひとまず資金繰りは改善した状況です。
実際こちらのキャッシュフロー表を見てください。
これは2Qの累計数字ですが、営業キャッシュフローは▲1,909億円、投資キャッシュフローは+372億円、実質フリーキャッシュフローは▲2,522億円です。
ちょっと乱暴かもしれませんが、フリーキャッシュフローを単純に3カ月で割ると約▲840億円ですので、2Qにおいてもこれだけまだ毎月キャッシュが燃える、キャッシュバーンしていることが伺えますね。そして財務キャッシュフローは+4,694億円となっており、それを借入等でしのいでいるという構図です。
以前一部報道でANAが公募増資を検討中という情報が流れましたが(以下記事)、今のところ正式に公募増資は発表されていない状況です。ただ、現在のキャッシュバーンが続けば、この公募増資も現実味を帯びてくる厳しい状況です。
20年度年間業績見通し&配当
ANAの20年度年間見通しと配当予想を見てみましょう。冒頭も言いましたが、1Q決算時点では非公表としていたものを、今回の決算発表に合わせて初めて公表をしています。
まず年間業績見通しはこちらです。
ポイントを箇条書きします。
- 売上高は前年比62%減少の7,400億円。
- 営業利益は前年608億円の黒字から▲5,050億円の赤字に転落。
- 当期純利益は前年276億円の黒字から▲5,100億円の赤字に転落。
想定はされていたものの、いざ公表された数字を見ると、凄まじい赤字額ですね。
そして配当予想はこちらです。
こちらは決算短信からの抜粋ですが、下期配当も0円と無配を決定しました。「え?まだ無配発表していなかったの?」と思う方もいるかもしれませんが、ANAはこのような状況下でも1Q時点では下期配当を無配とは言わずに「未定」として、まだファイティングポーズを取っていたのですね。それを今回「無配」として確定したというわけです。
これはさすがに想定出来たのでサプライズではないです。従業員の給与を削って、銀行からも巨額の支援をもらって配当だけ出すとなったら銀行団は資金を引き揚げるでしょう。
最後に:ANA業績は国際線の回復次第か
コロナ禍で非常事態宣言が出され外出自粛が行われた1Q(4~6月)は国内線も完全に需要消滅といった状況でしたが、足元はGotoトラベルといった支援もあり徐々に客足が回復基調にあります。
一方で、国際線は2Qにおいても需要消滅したまま、そして3Qも消滅したままの見通しを立てており、ここが回復してこないとANAの業績も回復してこないでしょう。実際、日本では比較的コロナは抑え込めている一方で、世界的なコロナ拡大は衰えを見せるどこから再び急激に増加を始めています。
この国際線の需要回復のためにANAが経営努力で改善出来ることはほぼなく、全ては現在開発が進んでいるコロナワクチン次第といったところです。
私も以前は毎月のように飛行機で出張をしていましたが、コロナ禍後久しく飛行機に乗っておりません。仕事柄、航空会社には非常にお世話になっているので、ぜひともこの苦難を乗り越えて頂き、再び世界の空を飛び回れる日が来ることを楽しみにしています!
頑張れANA!!!
尚、ANAとJALの財務状態を比較した記事を以前書いているので、興味があればこちらから御覧ください。
また決算書の読み方を勉強したいと思われている方にはこちらの本がおススメです。
堅苦しくなく、決算書の読み方全然分かりません!という方から、かじったことはあるけど改めて理解したいという初心者~中級者の方向けの本です。私自身も今更ながら改めて読むと頭の整理に繋がって非常に良書でした!
中級者以上だとこちらの本が個人的におすすめかな。
先に紹介した本よりはもう少し踏み込んでいて、尚且つ読みやすい良書です!
また、三菱商事を例に挙げて企業分析方法を学べる現役銀行員のたりたり社長という方が書いた良書もありおススメですよ!
ということで以上です!
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