こんにちは!総合商社マンです!伊藤忠商事が20年度第1四半期の決算発表したよ!進捗率26%と好調にスタートです!
伊藤忠商事が20年度第1四半期決算を発表
伊藤忠商事が本日8/5の13:00場中に2020年度第1四半期の決算発表を行いました。総合商社各社の決算発表は三井物産、豊田通商、丸紅、双日に続き5番目の決算発表となります(他商社の決算記事は当ブログ内の「総合商社関連カテゴリーから御覧ください」)。
伊藤忠商事は今期業績予想を出している商社の中では断トツの4,000億円という利益予想をしていたり、最近ではファミマのTOBを発表するなど、色々と話題に事を欠きません。三菱商事の株価&時価総額も最近上回ってしまいましたね。
そんな何かと話題に上がる伊藤忠商事の第1四半期決算がどう推移したのか早速見ていきたいと思います!
20年度第1四半期決算概要
伊藤忠商事の20年度第1四半期決算の概要を、伊藤忠商事が公表した決算資料を眺めながら見ていきたいと思います。
定量面からです。こちらのスライドをご覧ください。
ポイントを箇条書きします(上記スライドに記載されていない情報も含む)。
- 収益(売上)は前年比▲12.4%減収の2.4兆円。
- 営業利益は前年比▲29.6%減益の721億円。
- 四半期純利益は前年比▲28.9%(▲425億円)減益の1,048億円。
- 年間利益予想4,000億円に対しての進捗率は26%。
- 四半期純利益1,048億円の内、一過性損益は160億円。
- 実質営業キャッシュフローは前年比▲520億円減少の960億円。
こんな感じ。さすがに前年比減収減益と逆風が吹き荒れている状況ですが、年間予算の4,000億円に対する進捗率は25%を上回っており、順調といえる決算のようです。このスライドにも「1Q想定を大きく上回る」と記載されており、会社としてはもっと低調にスタートするイメージだったようですね。
もう少し利益面を詳しく見てみましょう。こちらのスライドはセグメント別の前年比較です。
細々としているのでポイントを箇条書きします。
- 1Q実績の当期利益1,048億円の内、非資源は803億円。非資源比率は78%(前年の76%より上昇)
- 前年同期比で増益となったセグメントは「エネルギー・化学品」「情報・金融」のみ。それ以外のセグメントは前年比減益。
- 年間予算進捗率25%を超えたセグメントは「金属30%」「エネルギー・化学品33%」「情報・金融36%」。一番厳しいのは「繊維4%」、続いて「機械11%」となっている。
- 持ち分連結をしている中国国営企業CITICの増益等で「その他」は前年比+71億円増益。
好調なセグメントと不調なセグメントがはっきりと分かれた決算となっていますが、赤字セグメントは無い状況ですね。個人的に気になっていたCITICは増益となったようです。後ほど詳しく見てみましょう。
続いて一過性損益(減損等)の発生状況を見てみます。こちらのスライドです。
御覧の通り、減損は特になく、むしろ一部事業売却等で160億円の利益計上となっています。前年は300億円あったので、そこから比べると利益が減少した状況ですね。
続いてキャッシュフローです。こちらのスライドをご覧ください。
ポイントを箇条書きします。
- 営業CFは前年比1,004億円増加の2,541億円と好調。これは過去最高。
- 投資CFは前年比▲551億円の▲912億円。各セグメントで投資が前年より増加。
- その結果フリーCFは1,629億円となり、これまた過去最高。
- 一方、営業CFから運転資金・リース会計の影響を除いた「実質営業CF」は960億円と前年比減少、実質FCも前年比大きく減少し10億円という結果。
四半期利益は前年比減少となっているものの、営業CFは前年比大きく増加しており、しかも過去最高のようです。しっかりキャッシュを稼ぎ出していることが分かりますね。投資もしっかり行われているようです(ま、投資はコロナ前に決定していたものだと思いますが)。
続いて財政状態を見てみましょう。こちらのスライドです。
- 株主資本比率(自己資本比率)は3月末から0.9%改善の28.3%。
- NET DERは3月末から0.03%改善の0.72倍で過去最良。
自己資本比率が低いように感じるかもしれませんが、商社はだいたいこんなもんですね。業界によって結構変わります。
またNET DER(ネット有利子負債と自己資本どちらが多いかを表す指標)は1倍を大きく下回っていますので、誤解を恐れずに分かり易くいうと「借金より自己資本のほうが圧倒的に多い」という状況です。つまり非常に健全な財務体質を誇っていると言えますね。
CITICの取り込み利益状況
伊藤忠が出資をしている中国国営企業CITICの取り込み利益の状況についてもう少し見ておきましょう。よくこのCITIC案件が伊藤忠商事のリスクとして語られますからね。こちらのスライドをご覧ください。
赤枠は私が付け足したものですが、これがCITICの取り込み損益の部分です。
- 1QのCITIC取り込み利益は146億円と前年比+12億円と増益。
- 今期年間では620億円の利益取り込みとしており、こちらは前年比▲44億円。
中国でのコロナ抑え込みが奏功した影響か今のところCITICは順調そうですが、この取り込み利益とCITICからの配当の差額が投資簿価に積みあがって将来の減損リスクとなり得ますので、引き続き注意が必要です。
加えて、CITICの株価の軟調推移も気になります。これがCITICの過去1年間の株価推移です。
※Bloombergから引用
2019年11月頃は10.70香港ドルだった株価はこの記事を書いている時点で7.43ドルで推移しています。過去に伊藤忠はこのCITICで減損計上をしていますので、更なる株価下落となると将来再度の減損もあり得るので注意必要です。
20年度年間業績&配当予想
伊藤忠商事の20年度年間業績予想及び配当予想も見ておきましょう。決算短信から該当部分を抜粋してみます。
まず年間業績予想はこちらです。
御覧の通り、「修正無し」ですね。期初に発表している4,000億円から変更ありません。
続いて配当予想はこちらをご覧ください。
こちらも「修正無し」です。年間配当88円(上期44円、下期44円)を維持し、累進配当を継続している状況です。配当性向は32.8%という水準ですね。
尚、こちらのスライドは過去の配当実績の推移です。
※伊藤忠商事HPから抜粋
累進配当というのは「配当維持」もしくは「毎期増配」を目指すことを意味するものですが、伊藤忠商事は2015年度以降「毎期増配」をしている状況です。素晴らしい。
尚、伊藤忠商事はこの記事を書いている時点で、総合商社で唯一自社株買いを行っています。最新の買付状況は以下記事に纏めていますので御覧ください。
最後に:伊藤忠商事首位奪回なるか?中国リスクもあり
今回伊藤忠商事が総合商社5番手として決算発表を行いましたが、1Q決算は前年比では厳しい状況なるも、年間予想に対しては至って順調に推移している状況であることが分かりました。
先日ネット記事で野村證券が以下予想を出していました。
- 伊藤忠:1Q予想900億円(年間4,000億円)
- 三菱商事: 1Q予想400億円(年間2,250億円)
伊藤忠の1Q利益はこの野村證券の予想を上回ってきましたが、気になるのはわいのポートフォリオの主力である三菱商事の行方です。笑 この野村証券の予想がある程度的を得ているとすると、今期はいよいよ伊藤忠商事が首位奪回をすることになりますね。
一方で、伊藤忠商事のリスクはやはり中国のCITICかなと思っています。最近米中対立が改めて激化していることと、日本と中国の間でも尖閣諸島を巡って連日報道がありますからね。この辺で有事が発生するなんてことになれば一気に日中関係悪化でビジネスにも影響が出るのではという懸念もあります。※ま、それを言ったら中国でビジネスを行っている企業全部だめですが。笑
あと、ファミマのTOBの期限も8月24日となっていますのでこれがどうなるのかも要注目ですね。
さて、気になる三菱商事の1Q決算発表は8/13(木)14:00です。三菱商事が王者の貫禄を見せられるのか、首位攻防から目が離せません!
※私は両者保有しているので、両者を応援しています。笑
ということで以上です!
尚、決算書の読み方を勉強したいと思われている方にはこちらの本がおススメです。
堅苦しくなく、決算書の読み方全然分かりません!という方から、かじったことはあるけど改めて理解したいという初心者~中級者の方向けの本です。私自身も今更ながら改めて読むと頭の整理に繋がって非常に良書でした!
中級者以上だとこちらの本が個人的におすすめかな。
先に紹介した本よりはもう少し踏み込んでいて、尚且つ読みやすい良書です!
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