こんにちは!総合商社マンです!伊藤忠商事が20年度第2四半期の決算発表したよ!決算絶好調!だけど減損リスク高まる?
- 伊藤忠商事が20年度第2四半期決算を発表
- 20年度第2四半期決算概要
- キャッシュフロー・財務状況
- CITICの取り込み利益状況
- 20年度年間業績&配当予想
- 最後に:上方修正しないのはCITIC減損リスクが理由か
伊藤忠商事が20年度第2四半期決算を発表
伊藤忠商事が11/4の13:30場中に2020年度第2四半期の決算発表を行いました。伊藤忠商事は今期業績予想を総合商社トップの4,000億円に設定しており、2位の三菱商事の2,000億円を大きく引き離している状況です。
1Qの進捗率は26%と、下期偏重型と言われている伊藤忠にしては好調な滑り出しとなっていましたが、その好調が継続しているのか、2Q決算を見ていきたいと思いますよ!
※当記事内掲載のスライドは全て伊藤忠商事の決算公表資料の抜粋です。
それでは参りましょう!
20年度第2四半期決算概要
伊藤忠商事の20年度第2四半期決算の概要を、伊藤忠商事が公表した決算資料から見ていきたいと思います。
定量面からです。こちらのスライドをご覧ください。
ポイントを箇条書きします(上記スライドに記載されていない情報も含む)。
- 収益(売上)は前年比▲10.4%減収の4.9兆円(1Qは▲12.4%)。
- 営業利益は前年比▲14.2%減益の1,909億円(1Qは▲29.6%)。
- 当期純利益は前年比▲12.6%減益の2,525億円(1Qは▲28.9%)。
- 年間利益予想4,000億円に対しての進捗率は63%(1Qは26%)。
- 当期純利益2,525億円の内、一過性損益は495億円。
- 実質営業キャッシュフローは前年比▲590億円減少の2,660億円。
結構すごいことになっています。
まず減収減益の状況は変わりませんが、売上、利益面において1Qより大幅に改善をしてきていることが分かります。そして、まさかの2Q単体では過去最高益になっているようです。
年間予算の4,000億円に対する進捗率は1Q時点で26%だったものが、2Q時点で63%まで急上昇です。いや、コロナ禍って言葉、ご存じですか?って思ってしまう決算内容ですね。笑
もう少し詳しく見ていきます。
こちらのスライドはセグメント別の前年比較です
細々としているのでポイントを箇条書きします。
- 2Q実績の当期利益2,525億円の内、非資源は2,012億円。非資源比率は81%(前年同期の78%より上昇)
- 前年同期比で増益となったセグメントは「エネルギー・化学品」「食料」「情報・金融」「第8」。それ以外のセグメントは前年比減益。
- 年間予算進捗率50%を超えたセグメントは「金属:62%」「エネルギー・化学品:69%」「情報・金融:59%」「第8:91%」。※繊維、機械、住生活は30%台で低迷。
- 持ち分連結をしている中国国営企業CITICの減益あるもCP取込増益等で「その他」は前年比+40億円増益。
好調不調それぞれ存在しているようですが、一つも赤字のセクターが無いという状況は伊藤忠の強さを物語っているかもしれません。
続いて一過性損益(減損等)の発生状況を見てみます。こちらのスライドです。
御覧の通り、ファミリーマートで▲125億円の減損が発生しているものの、それ以外の売却益による特益のほうが多く、一過性損益は495億円のプラスという状況です。ずっと懸念されている中国国営企業のCITICの減損は今のところ発生していないですね。
キャッシュフロー・財務状況
伊藤忠商事のキャッシュフローと財務状況を見てみましょう。まずキャッシュフローです。こちらのスライドをご覧ください。
ポイントを箇条書きします。
- 営業CFは前年比▲267億円の4,591億円。
- 投資CFは前年比▲105億円の▲1,380億円。
- その結果フリーCFは前年比▲371億円の3,212億円。
- 一方、営業CFから運転資金・リース会計の影響を除いた「実質営業CF」は▲590億円の赤字。
1Q時点では営業CFやフリーキャッシュフローが過去最高となっていましたが、2Qは若干勢いに陰りが出ている状況です。ただ、投資のタイミング等で大きくズレるものなので、あまり現時点では気にしなくて良いかもしれません。
続いて財政状態を見てみましょう。こちらのスライドです。
- 株主資本は過去最大の3.17兆円。
- 株主資本比率(自己資本比率)は3月末から1.7%改善の29.1%。
- NET DERは3月末から0.01%改善の0.74倍。
伊藤忠は過去最高とか過去最大という表現が好きですね。笑
自己資本比率が30%割っているので低いのではと思うかもしれませんが、総合商社は各社皆基本的にどこも30%前後なので、業界によって適正水準が変わると思った方が良いです。NETDERも1倍を大きく割り込んでいるので健全です。
※NET DERというのは手元現金も加味して負債と自己資本どっちが多いですか?という指標です。1倍を割っていれば負債より自己資本のほうが多く健全と言われています。
CITICの取り込み利益状況
伊藤忠が出資をしている中国国営企業CITICの取り込み利益の状況についてもう少し見ておきましょう。よくこのCITIC案件が伊藤忠商事のリスクとして語られますからね。こちらのスライドをご覧ください。
赤枠は私が付け足したものですが、これがCITICの取り込み損益の部分です。
- 2QのCITIC取り込み利益は347億円と前年比▲65億円と減益。
- 今期年間では620億円の利益取り込みとしており、進捗率は56%。
1Q時点でのCITICからの取り込み利益は前年比+15億円でしたが、2Q累計では▲65億円と減益となってしまっています。ただし、年間取り込み益620億円に対する進捗率は50%を超えてきているので、今のところ想定よりも順調に推移しているといったところでしょうか。
ただし、注意が必要です。
CITICの株価をご覧ください。CITICは香港に上場しているのですが、株価がかなり下がってきています。
※Bloombergから引用
これは1年間のチャートになりますが、2020年1月は10.42香港ドルだった株価はコロナショックや米中対立もあり、11/4時点で5.78ドルまで下がってきています。伊藤忠の簿価がいくらになっているのか分かりませんが、当然株価が下がれば減損リスクが高まります。
今回2Q時点で既に年間予算に対する進捗率は63%に達していますが、上方修正しなかったのはこの減損をぶち当てようとしているのでは?と穿った見方をしてしまうのは私だけでしょうか。
20年度年間業績&配当予想
伊藤忠商事の20年度年間業績予想及び配当予想も見ておきましょう。決算短信から該当部分を抜粋してみます。
まず年間業績予想はこちらです。
御覧の通り、「修正無し」ですね。期初に発表している4,000億円から変更ありません。
続いて配当予想はこちらをご覧ください。
こちらも「修正無し」です。年間配当88円(上期44円、下期44円)を維持し、累進配当を継続している状況です。配当性向は32.8%という水準ですね。
尚、こちらのスライドは過去の配当実績の推移です。
※伊藤忠商事HPから抜粋
累進配当というのは「配当維持」もしくは「毎期増配」を目指すことを意味するものですが、伊藤忠商事は2015年度以降「毎期増配」をしている状況です。
尚、伊藤忠商事はこの記事を書いている時点で、総合商社で唯一自社株買いを行っています。最新の買付状況は以下記事に纏めていますので御覧ください。
最後に:上方修正しないのはCITIC減損リスクが理由か
今回伊藤忠商事の2Q決算を見てきましたが、正直決算そのものはコロナ禍にあっても非常に順調のように見えます。一方で進捗率63%に達している一方で、上方修正をしないのは、先ほども触れたようにCITICの減損をぶち当てようとしているのではと個人的な予想です。(私は伊藤忠株ホルダーなので、減損してほしくないですが。笑)
もともと伊藤忠は今期業績予想を4,000億円とする一方、500億円のバッファーを見ていることを期初の決算発表時に言っています。つまり、何も減損が発生しなければ4,500億円の利益を出せるということです。
伊藤忠がライバルとして見ている三菱商事がコロナ禍で苦しむ中で(三菱商事の今期業績予想は2,000億円)、今期頑張って4,500億円を出す必要もないでしょうから、もともとCITICの減損を今期中に出そうとしている計画なのかもしれませんね。
さてさて、どうなることやら。今後の伊藤忠の動きに注目です!
尚、決算書の読み方を勉強したいと思われている方にはこちらの本がおススメです。
堅苦しくなく、決算書の読み方全然分かりません!という方から、かじったことはあるけど改めて理解したいという初心者~中級者の方向けの本です。私自身も今更ながら改めて読むと頭の整理に繋がって非常に良書でした!
中級者以上だとこちらの本が個人的におすすめかな。
先に紹介した本よりはもう少し踏み込んでいて、尚且つ読みやすい良書です!
また、三菱商事を例に挙げて企業分析方法を学べる現役銀行員のたりたり社長という方が書いた良書もありおススメですよ!
当ブログでは個別の銘柄について言及することがありますが、投資を推奨しているものではありません。投資は自己判断でお願いします。
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