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伊藤忠商事の減損リスク高まる!?

 


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こんにちは!総合商社マンです!伊藤忠も減損する可能性高いかもよ

さて今日は総合商社分析シリーズです!昨日総合商社の1社である丸紅がコロナショックで巨額の減損を発表しました。(詳しくは以下記事をどうぞ!)

 

www.sogoshoshaman.com

 

そうした中で他商社の業績は大丈夫??という懸念が高まっています。そこで今日はこれまた総合商社の1社である伊藤忠商事にフォーカスをしてみましょう!

 

 

伊藤忠商事の最新利益見通しは?

 まず今期の伊藤忠商事の最新の業績予想を見てみましょう。

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参照元:伊藤忠商事ホームページ

https://www.itochu.co.jp/ja/ir/financial_statements/2020/__icsFiles/afieldfile/2020/02/05/20_3rd_02_1.pdf

これは2020年2月5日発表された第三四半期決算発表時の資料です。これによりますと2020年3月期の決算見通しは5,000億円の黒字となっています。また第三四半期時点の純利益は4,267億円と5年連続で増益。年間予想純利益に対する進捗率は85%と極めて順調と言える決算内容となっています。また第二四半期決算の際には鉢村CFOが「幅広い領域で利益を積み重ねる『百花繚乱(りょうらん)』の好業績となった」という表現で業績が極めて順調であることを強調していた状況です。

 

また、2月5日に開催されたアナリスト向けネットコンファレンスでの質疑応答要旨の中で以下コメントは注目に値します。

 

  • Q:4Qにおける一過性損失の可能性について。
  • A:3Qで減損損失を認識すべきものは適切に処理を行っている。(後略)
  • Q:一過性損益について。期初計画、1-3Q実績、通期見通しについて数字の整理をさせて頂きたい。
  • A:1-3Qの一過性損益は640億円。期初計画の420億円を大きく上回っているが、期初に想定した案件がほぼ出きったことに加え、損益的にプラスαがあった結果。300億円の損失対応バッファーは未使用。通期見通しについてのご判断はお任せしたい。

 上記の通り、伊藤忠は今期5,000億円の利益予想とは別に300億円の損失バッファーを用意していました。言い換えると特段損失が出てこなければ5,300億円の実力値だと言っていることになります。 

純利益見通し5,000億円の前提は?

 それではこの5,000億円の利益を出す前提となっている資源価格はどうなっているのか見てみましょう。それも伊藤忠のプレスリリースの中に書いてあります。 

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為替前提

まず為替前提ですが19年度見通しは110円で見ていますので足元110円前後で推移していることからこの点は大きな心配はなさそうです。

原油前提

原油価格の2019年度見通しはブレントで65ドルを想定しています。この記事を執筆している時点ではブレント原油はUSD26で推移していますので、それを半分以上下回っているということです。現在のブレント原油価格を見たい方は以下リンクからどうぞ。

Brent Oil Price - Investing.com

鉄鉱石前提

 鉄鉱石の2019年度見通しは96ドルを想定しています。一方、この記事を執筆している時点の鉄鉱石先物価格は86ドル程度で推移。若干下回っています。ただし、前回決算発表した2月時点とほぼ同レベルの価格で推移しているので大きな影響は無さそうです。

鉄鉱石 - 先物契約 - 価格

 

主要の2019年度決算の想定価格は上記の通りです。ではこれに対して伊藤忠は何かコメントを出していますでしょうか?はい、これについても2月5日に開催されたアナリスト向けネットコンファレンスでの質疑応答要旨の中でコメントを出しています。

 

  • Q:コロナウイルスによるCITICを始めとする中国事業や、特に非資源分野等、事業別の影響について教えて欲しい。
  • A:CITICの業績は金融事業を中心に好調。中国政府は景気がスローダウンすると流動性供給により活性化を図るため、コロナウイルスの影響が大きくなればなるほど国有企業であるCITICの役割が大きくなる可能性高い。年間計画に対する進捗率も高く、CITICの業績は心配していない。しかし、中国経済全体がスローダウンすることによる消費の落ち込みや、サプライチェーンが寸断されることによる輸出や設備投資への悪影響等が、世界的に拡がるといったシナリオが当社の業績に一番悪影響がある。連結純利益に占める中国事業関連損益(CITIC取り込みを除く)は、食糧原料、汎用樹脂、繊維のトレード、消費者金融等の中国国内ビジネスが5%程度であり、最終客先が中国である鉄鉱石やパルプ取引等を合わせると15%程度となる。即ち、業績面から中国関連の割合が大きいのは鉄鉱石のビジネスであるが、当年度は、ほぼヘッジが終わっているので影響は限定的。但し、来年度はまだ見通せず、影響が大きくなる可能性がある。

 つまり、資源関連の価格ヘッジは2019年度は終わっており、影響はほぼほぼ無いと言い切っています。従い、資源価格の影響は2021年3月期側の会社業績に影響が出ると言ってよいでしょう。一方、気になるのがこのCITIC株の減損リスクです。

中国国営企業CITIC株の減損はあるか?

伊藤忠は2018年11月2日に中国国営企業のCITIC株の減損を発表しました。その額なんと1,433億円と巨額の減損です。この際の日経新聞記事(伊藤忠、中国事業で損失先行 CITIC株1400億円減損 :日本経済新聞)によると

  • 伊藤忠のCITIC株取得平均は13.8香港ドル
  • 2018年11月減損当時、CITIC株価は11~12香港ドルで推移していた
  • CITICの業績は好調なるも保守的見積もりで減損を実行した

 とあります。一方、現在のCITIC株価はどうでしょうか?この記事を執筆時点で8香港ドルを割って7.97香港ドルとなっています。株価を見たい方は以下リンクからどうぞ。

267:Hong Kong 株価 - 中国中信[シティック] - Bloomberg Markets

 この通り仮に当時の減損後の帳簿簿価が11~12香港ドルまで下がっていたとしても、現在の8香港ドルでは再び減損リスクが高まっている可能性が極めて高いと思っています。また、CITIC投資の問題は持ち分連結をしている一方で、配当額が連結している利益よりも小さいため、その差額がBSの投資簿価に積みあがっている事です。2018年11月に減損しているので投資簿価は以前より下がっているとはいえ、この点は引き続きのリスクになるでしょう。

結局のところ伊藤忠は予算を達成できるのか!?

 

これはあくまで私個人的な予想ですが、さすがの伊藤忠も2019年5,000億円という見通しを達成するのは極めて難しくなってきていると思います。 理由は以下です。

  • 2018年11月のCITIC株減損をした際はほぼ同じタイミングでファミリマートの子会社化を実行し、それによりほぼ同レベルの1,412億円の再評価損益を計上し相殺して予算を達成させるという、如何にも岡藤会長らしい上手い手で乗り切りましたが、ここまで世界情勢が厳しくなっている状況下、当時のような奥の手も無さそうですし、予算達成は難しいのではと思っています。
  • このような情勢で競合も減損引き当てを立てる可能性が極めて高いです。減損をするメリットは将来のリスクを減らすことが出来、来期以降の決算が楽になります。つまり自社だけ無理して減損を立てないと来期以降の競争で不利になるという考えが経営陣の頭の中にあるのは間違いないと予想するからです。

一方、配当は維持するのではと予想しています。減損はキャッシュアウトしない帳簿上の数字をいじるだけだからということと、伊藤忠商事は上場企業の中では珍しい累進配当を宣言している企業だからです。累進配当というのは毎年配当額を増額させるという株主にとってはなんとも心強い方針で、総合商社の中では他にも三菱商事が累進配当を宣言しています。

岡藤会長は予算を必達させる人で有名ですが、私が記憶している限り2010年に就任してから予算を達成し損ねたのは2016年のシェール革命で総合商社各社が赤字に陥った時だけです。しかしその際は王者三菱商事・三井物産が巨額の赤字転落する中で予算は達成出来なかったものの黒字を確保、一躍伊藤忠商事が一位に躍り出たときでした。岡藤氏はこのことを不戦勝と呼んでいますが笑。

そんな伊藤忠商事がこのコロナショックに見舞われている2019年度決算をどう着地させるのか、、、今後の動向に注目です!!

 

今回も最後までお読みいただき有難うございました!