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【JAL】20年度第1四半期決算概要!上期無配に転落です!

こんにちは!総合商社マンです!コロナ禍の大打撃を受けているJALが20年度第1四半期決算を発表したよ!上期無配に転落してしまいました。

 

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JALが20年度第1四半期決算を発表

JALが本日8月3日に20年度第1四半期の決算を発表しました。19年度の第4四半期からコロナ禍に見舞われ、その4Qの決算は酷い状況でしたが、今回発表した4-6月の1Q決算は更にコロナの状況が世界的に深刻になった期間ですので、JALへの決算へのインパクトがどれほどだったのか、非常に注目です。

ちなみに先日JALに先立ちANAも1Qの決算発表をしており、巨額の赤字転落という状況でしたね。

 

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ANA同様にJALの決算についてもJALが公表した決算資料を眺めながら見て行きたいと思います。 

 

20年度第1四半期決算概要

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JALの20年度第1四半期決算の概要を早速見て行きましょう。(なんでプレゼンの表紙、手書きの絵やねん。笑)

定量実績

定量面から見てみます。こちらのスライドをご覧ください。

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ポイントを箇条書きします。

  1. 売上は前年比▲78.1%減収の763億円。実に▲2,724億円の減収。
  2. EBITは前年比▲1,509億円減益の▲1,310億円の赤字に転落。
  3. 純損益は前年比▲1,066億円減益の▲937億円の赤字に転落。

飛行機をほとんど飛ばせない状況でしたので止む無しの赤字転落といったところですね。ちなみにここでEBITという小難しそうな言葉が出てきています。会計用語説明記事ではないので詳細は割愛しますが、「Earning Before Interest, Tax」の略で、日本語で言うと「利払い前・税引き前利益」のことです。営業利益のこと?と思うかもしれませんがちょっと違って「EBIT=営業利益+利息以外の営業外損益+特別損益」で計算されます。営業利益+αくらいに思って眺めれば良いかと。

利益面についてもう少し詳しく見て行きましょう。こちらのスライドをご覧ください。

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このスライドは前年と今期のEBITの差額を要因別に分解して説明したものですね。ポイントを箇条書きします。

  1. EBITは19年度199億円、20年度は▲1,310億円となり、▲1,509億円の減益。
  2. 最大の要因は国際便の減収▲1,278億円と国内線の減収▲1,081億円等で、収入全体で▲2,724億円の下押し要因。
  3. 一方コスト削減の総額は1,250億円。燃油等の変動費+442億円や固定費の人件費削減で+112億円。
  4. しかしながら収入減少をコストカットで補え切れず▲1,509億円の赤字転落。

こんな感じですね。人件費まで削って頑張ったけど減収を賄え切れず赤字転落ですね。コスト削減についてもう少し見てみましょう。こちらのスライドをご覧ください。

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上段が変動費、下段が固定費です。

ポイントを箇条書きします。

  1. 1Q変動費総額は625億円と前年比▲63.4%(▲1,084億円)削減。
  2. 1Q固定費総額は1,432億円と前年比▲10.4%(▲166億円)削減。
  3. 変動費(625億円)の内、一番大きいのは燃油費(194億円)、続いて整備費(185億円)。燃油費は前年比▲70%削減出来ているが、整備費は▲3.7%のみ。
  4. 固定費(1,432億円)の内、一番大きいのは人件費(647億円)、続いて機材費(336億円)。人件費は前年比▲15%削減するも、機材費は+6%増加。

こんな感じ。前年は変動費(1,709億円)のほうが固定費(1,599億円)より多い状況でしたが、今期は変動費よりも固定費のほうが多くなっていますね。ここまで売り上げが減ればそうなってしまいますし、それが今回のコロナ禍の凄さを物語っている気がします。

 

財務状況

JALの財務状況を見てみましょう。まずJALの資金繰りは大丈夫なのでしょうか?それについてはこちらのスライドをご覧ください。

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ポイントを箇条書きしてみましょう。

  1. コロナ禍発生後、銀行借入・社債等で3,000億円を資金調達。
  2. 既存の500億円のコミットメントラインに加えて、新たに1,500億円のコミットメントラインを獲得。
  3. 1Q期間中は毎月500億円の資金流出があったが2Q以降は改善見込み。
  4. 6月末時点のキャッシュ残高は3,943億円+2,000億円のコミットメントライン。

こんな感じ。コロナ禍最悪期だった1Q期間中は毎月500億円の現金流出があったのですね。それでも6月末の現金残高は潤沢にあると言えるでしょうから、すぐに資金繰りに窮するという状況にはないことが分かりますね。

また財務状況をまとめたスライドも見ておきましょう。こちらです。

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ポイントを箇条書きします。

  1. 有利子負債総額5,046億円の内、1年以内返済は507億円のみで安心感あり。
  2. 自己資本比率は45.9%と3月末から▲5.3%悪化するもまだ超健全水準(※ANAは33.9%)。
  3. DEレシオは3月末の0.3倍から0.5倍へと悪化。

こんな感じ。1QのPLは酷い状況でしたが、財務状況は「ナニコレ?」って思ってしまうほど健全です。自己資本比率の高さも凄いですが、何よりDEレシオの低さが目を惹きます。DEレシオは有利子負債と自己資本どちらが大きいかを示す指標で1倍を切ると自己資本のほうが大きくなります。言い換えると「実質無借金経営」ということですね。3カ月の間に0.3倍から0.5倍に悪化しているのは注意必要ですが、すぐにぶっ倒れる水準にはないことが分かりますね。

 

 

 

 

20年度年間業績&配当予想

JALの年間業績予想及び配当予想を見ておきましょう。

まず年間業績予想です。決算短信の抜粋を見てください。

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御覧の通り、今期の業績予想は現時点では出せないということで、今回は発表を見送りました。今後予想が見えてきたら出すということですね。

続いて気になる配当予想です。こちらも決算短信の抜粋です。

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出ました!「上期無配転落」です!

ま、全く驚きはしませんけど。笑 ただし、期末配当は現時点では未定とし、ファイティングポーズを取りました。この無配に関しては決算短信の補足説明書に以下の通り記載がありましたので抜粋しておきます。

 

(4)当期の配当について
2020年2月以降の新型コロナウイルス感染拡大により、当社の属する航空業界は甚大な影響を受けております。2020年度第1四半期の財務・法人所得税前四半期損益は1,310億円の大幅な損失となりました。

また、新型コロナウイルス感染拡大の終息見通しは未だ不透明な状況です。このような状況を踏まえ、当社は手元流動性の確保を最優先とすることが最善であると判断いたしました。そのため、当期の中間配当はやむをえず実施しないことといたしました。

株主、投資家の皆さまに対し、深くお詫び申し上げます。当社グループが現在置かれている状況に鑑み、なにとぞご理解を賜りたく存じます。
なお、2021年3月期の期末および年間配当予想については、新型コロナウイルス感染拡大が当社グループの業績に与える影響について、現時点において見極めることが極めて困難なことから、未定とさせていただきます。

 

最後に:JAL&ANAどっちも応援したい

今回JALの2020年度第1四半期決算を見てきましたが、先日のANAの決算と同様にかなり厳しい決算となりました。一方で、ANAの財務状況と比較してもJALの財務状況の健全性が際立った印象です。JALは一度倒産をして、その後税制優遇等を受けてANAから批判が出ていたりもしていましたが、今回改めてその優遇を受けた結果JALの財務力が相当強くなったことが分かった気がします。

とはいえ、JALもANAも全く油断は出来ずですし課題は同じで、「コロナ禍の後のニューノーマルの時代に、従来通りのビジネスモデルが成立するのか」が問題になっていきます。従来のビジネス出張需要はZOOMやMICROSOFT TEAMS等にある程度奪われていくでしょうし、観光の戻りもどれほど回復するか全く想像がつきませんからね。それにどう対応していくのか、注目していきたいですね。

尚、私は仕事柄JALもANAも使いますので、どっちも好きな会社ですし応援したい気持ちです(株は持ってないけど笑)。両者切磋琢磨しながらコロナ禍を耐えて頂き、再び飛行機に乗れることを楽しみにしていますよー。

 

頑張れJAL&ANA!!

 

 

ということで以上です!

尚、決算書の読み方を勉強したいと思われている方にはこちらの本がおススメです。

 

 

堅苦しくなく、決算書の読み方全然分かりません!という方から、かじったことはあるけど改めて理解したいという初心者~中級者の方向けの本です。私自身も今更ながら改めて読むと頭の整理に繋がって非常に良書でした!

中級者以上だとこちらの本が個人的におすすめかな。 

 

 

先に紹介した本よりはもう少し踏み込んでいて、尚且つ読みやすい良書です!

  

当ブログでは個別の銘柄について言及することがありますが、投資を推奨しているものではありません。投資は自己判断でお願いします。

今回も最後までお読み頂き有難うございました!

 

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