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【三菱商事】 統合報告書2020を発行!垣内社長よりも増CFOメッセージに注目!

こんにちは!総合商社マンです!三菱商事が年に一度発行する統合報告書をリリースしましたよ!

 

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三菱商事が統合報告書2020を発行

三菱商事が統合報告書2020を発行しました。統合報告書は年に一度発行されるもので、アニュアルレポートとも呼ばれています。大手企業は発行しているところが多いですね(確か義務ではなかったはず)。

この統合報告書発行の目的は「投資家向けの情報発信」です。定性的、定量的な戦略であったり、企業の強みを資料の中で説明しているので、私は興味のある企業の統合報告書は結構目を通しています。

さて、今回三菱商事が統合報告書2020を発行しましたが、ページ数はなんと107ページに渡ります。私はこういう資料を見るのが好きなので一通り目を通すのですが、さすがに全ての資料に細かく目を通すのは大変ですよね。

そういう方には、統合報告書に掲載されている社長やCFOのメッセージだけでも読むことをお勧めします。その会社が今どのような方向に向かおうとしているのかを理解出来る手助けになりますよ。

ということで、今回の記事では、統合報告書内に掲載されている社長とCFOのメッセージで、個人的に気になった部分を抽出して見ていこうと思います。

尚、107ページ全部見たいという方は三菱商事のホームぺージの投資家情報から御覧頂けます。

 

 

統合報告書:垣内社長メッセージ

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統合報告書内に掲載されている垣内社長メッセージにまずは焦点を当ててみます。個人的に気になった部分を抽出して、そこに私、総合商社マンのコメントを差し込んでいきます。

 

わが社は8月に2021年3月期の通期業績見通しを公表しました。極めて厳しい現実を役職員全員が真正面から受け止め、事業経営の真価が問われているとの危機感の下、既存事業の足元を固め直すことが喫緊の課題です。

三菱商事は2019年度は税後利益5,354億円で業界首位だったものの、今期の2020年度は2,000億円という利益予想となっており、首位争いを繰り広げていた伊藤忠商事の4,000億円という利益予想の半分の水準です。是非とも足元を固めて、再度の首位奪還を早期に実現してもらいたいものです。

 

2016年3月期の連結赤字決算以降、強い決意の下で資産入れ替えを進めた結果、わが社の事業ポートフォリオは外部環境への耐性が強化されました。足元の状況を踏まえても、事業ポートフォリオ戦略の根幹や財務の健全性が揺らぐことはありません。

ここでいう外部環境への耐性が強化されたというのは、2016年3月期には赤字になった一方、今回コロナ禍で減益とはなったものの、赤字転落しなかったことを指していますね。また財務健全性には非常に強い自信を持っていることが伺えます。

 

世界経済が本格的な回復に向かうのは、ワクチンの普及も考えると、早くても2021年以降と想定され、グローバルな景気動向は、U字型に回復していくことを基本シナリオとしています。

V字回復では無く、U字回復を想定しています。つまり2021年度の業績も2020年度の2,000億円から一気にもとの水準である5,000億円程度まではすぐに戻らないと考えていることが伺えます。

 

EX(エネルギートランスフォーメーション)については、低・脱炭素社会を迎える中、大きなウエイトを占めるわが社のエネルギー関連の事業ポートフォリオをどう進化させていくかが、最大の課題です。(中略)今後30年先の低・脱炭素社会実現に向けた技術革新も想定し、わが社なりのビジネスを通じた最適解を2020年3月期中に提示していきたいと思います。

EXというのは化石燃料を中心とした現代のエネルギー構造から、再生可能エネルギーへの変革を指したものですね。三菱商事は利益に占める資源が大きいので、そのあたりの最適解を2022年3月期中に提示するという点は、個人的に超注目しています。

また現在推進中の「中期経営戦略2021」についても社長メッセージの流れで進捗とハイライトが纏められていたので、こちらをご覧ください。

 

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4番目の定量目標・資本政策の欄で改めて「累進配当を継続」することを強調していますね。2019年度の利益実績5,354億円から2,000億円に減益となっても累進配当を継続しているのは、財務に相当の自信があることと、減益とはなってもキャッシュフローがそこまで傷んでいないことが要因だと思います。

この定量目標・資本政策に特化したスライドもあったので、こちらをご覧ください。

 

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現在の中期経営戦略期間である2022年3月期まではほぼ間違いなく累進配当を継続することをここでも示している状況です。そうなってくると、2023年3月期以降の次期中期経営戦略でも現在の累進配当政策を維持するのかが注目ポイントになってきますね。

この累進配当を含めての資本政策については次のCFOメッセージでより詳細に語られているので、次のCFOメッセージで詳しく見てみましょう。

 

統合報告書:増CFOメッセージ

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増CFOのメッセージを見ていきましょう。CFOなので、より定量的なメッセージが多く、個人的には社長メッセージより読んでいて面白いかったです。

 

三菱商事グループにおける2020年3月期の連結純利益は、前期比で553億円減益の5,354億円となりました。(中略)厳しい事業環境において、複数の減損損失を計上しつつも、「中期経営戦略2021」で掲げた資産入れ替えの着実な実行を反映した決算と総括しています。

これは2020年3月期の振り返りですね。前評判では伊藤忠に首位を持っていかれると言われていましたが、銅事業による特別利益計上で首位を死守したのが2020年3月期でしたね。

 

キャッシュフローについては、営業収益キャッシュフローが営業収入や配当収入等により6,721億円の収入となりました。投資キャッシュフローは、資産入れ替えによる売却の収入等があった一方、Eneco社の買収など大口の新規投資等により5,007億円の支出となりました。この結果、調整後フリーキャッシュフローは1,714億円の収入となりました。

フリーキャッシュフローというのは営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを差し引いた後に自由に使えるお金ですね。「自由に使える」の意味は借入金の返済に回したり、配当に回したり、ってことです。

三菱商事は本業でしっかり営業キャッシュフローを稼ぎながら、大型投資をしても既存のビジネスの売却をすることで新陳代謝を行い、フリーキャッシュフローを確保しているということです。

ちなみに三菱商事が1年間で株主に支払う配当金総額は約2,000億円なので、2020年3月期のフリーキャッシュフローは全て配当に回っているという状況は留意必要ですね。

 

2021年3月期の配当見通しは、中経で掲げている累進配当性を継続し、2020年3月期から2円増配の1株当たり134円としました。(中略)2021年3月期の業績見通しが厳しい中でも、累進配当性の継続に対する経営の揺るがない意思を示したかたちです。

 かなり強い表現で「累進配当性」へのコミットを宣言していますね。個人的に結構好きな発言です。過去のキャッシュフローの推移に関するスライドもあったのでこちらをご覧ください。

 

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詳細は割愛しますが、注目したいのは四角で囲んであるフリーキャッシュフローの推移です。2017年3月期~2019年3月期までは5,000億円台から6,000億円台に成長していますが、2020年3月期は1,700億円に急減していますね。

先ほど三菱商事の年間支払い配当総額は約2,000億円と書きましたが、2020年3月期だけ見るとフリーキャッシュフローは全て配当に回ってしまっている状況でした。

ただし、灰色の部分の投資キャッシュフローを見ると原因が分かりますが、2020年3月期は投資額が▲5,007億円と他の年と比べると大きくなっていますね。これは三菱商事が注力している次世代の再生可能エネルギービジネスの中核となるオランダのEneco社に5,000億円という巨額の投資を行ったことが要因です。

2021年3月期のCF予想は出していないと思うので、コロナ禍の影響をCF面でどの程度受けるのか分かりませんが、もともと6,000億円程度のフリーキャッシュフローを稼ぐ実力のある企業であることを鑑みると、個人的にはあまり累進配当に対する不安は持っていません。

 

利益が減少しておりますが、非資金項目も内包されておりますので、営業収益キャッシュフローは利益の減少分ほど落ち込んでおらず、累進配当の継続には支障がない状況です。

これは「配当性向が上昇傾向にありますが、今後の株主還元方針について、どのように理解すればよいでしょうか?」という質問に対する回答です。

減価償却であったり、減損というのは利益は減りますが、キャッシュフローを減らすものではないので、少なくとも現時点では累進配当は問題ないことを繰り返し言っていますね。

 

自社株買いについては、引き続き資本コントロールを目的に、機動的に実施する資本政策の一環として位置付けております。(中略)仮に投資が抑制されるような状況が長引き、余剰資本になる場合には自社株買いによる資本圧縮が選択しになり得るということです。

資本コントロールというのはいろいろありますが、例えばROEが挙げられますね。自社株買いをすれば、株数が減少して、その分一株当たり利益も上昇してROEも向上しますからね。実際増CFOはこのメッセージの中でROE向上を目指していると言っています。

 

非常に安定的でリスクの低い事業体に移行することも考えていますが、その場合には、例えば資源価格が上昇した場合にはそのメリットを享受できなくなります。過去には、資源価格が上昇したときに爆発力をもって利益が上がっていたのも事実であり、それが次の投資の財源になることも確かです。どちらにも偏りたくないというのが三菱商事であり、中途半端といわれても構いませんが、両方持っているのが三菱商事の魅力です。

正直、今回のアニュアルレポートの中で、最も注目すべき点が、この増CFOの発言じゃないかなと個人的には思います。

何をそんなに注目しているかというと、最近の総合商社の流行りは「非資源」です。各社「資源」の比率を下げて「非資源」の比率を上げることで安定した経営を目指そうというのが潮流となっています。

その中で、この増CFOの発言はある意味、その流れに反旗を翻す内容です。正直、読んでいて気持ちがよかったです。言い換えるなら「我々は非資源は強くするものの、中核である資源ビジネスは絶対手放さない。爆発力こそが三菱商事の魅力だ!!」と言っていますね。(あくまで私の理解を表現したまでですが笑)

今まで、ここまではっきりとしたメッセージを対外的に出していたことは、少なくとも私は把握をしていないので、株式市場がどう評価するかは知りませんが(笑)、私は非常に好印象のメッセージでした。

てか、これ、CFOじゃなくて、垣内社長の口から言って欲しいですが。笑

 

最後に:首位奪還は2023年3月期以降か

今回、三菱商事の統合報告書内掲載の垣内社長と増CFOのメッセージにフォーカスして気になるポイントを挙げてみましたが、これだけ読んでみても、経営陣がどういう方向に向かっていこうとしているのかが垣間見えて面白いですよね。

三菱商事はU字回復を想定しているということなので、2022年3月期頃までは伊藤忠が首位を維持するのかなと想像しますが、増CFOのメッセージの通り、爆発力に関しては圧倒的に三菱商事が勝るとは思うので、資源価格次第では2022年3月期の首位奪回もありえそうです。

が、「結局資源頼みかよ」という評価を株式市場から下されると、いつまでたっても株価が評価されないことにもなりかねないので、是非ともROEの向上には努めて欲しいというのが個人的な感想です。

ま、今回の記事を纏めると、「増CFO良く言ってくれた!!!」、これに尽きます。笑

さて、当ブログでは総合商社をいろいろな角度から見て各社の特徴を纏めています。

以下記事に各社のROEの状況も含めて過去記事を纏めてありますので、興味があるトピックの記事があればぜひ御覧頂ければと思います!

 

www.sogoshoshaman.com

 

尚、決算書の読み方を勉強したいと思われている方には以下の本がおススメですよ。

 

 

堅苦しくなく、決算書の読み方全然分かりません!という方から、かじったことはあるけど改めて理解したいという初心者~中級者の方向けの本です。私自身も今更ながら改めて読むと頭の整理に繋がって非常に良書でした!

中級者以上だとこちらの本が個人的におすすめかな。 

 

 

先に紹介した本よりはもう少し踏み込んでいて、尚且つ読みやすい良書です!

また、三菱商事を例に挙げて企業分析方法を学べる現役銀行員のたりたり社長という方が書いた良書もありおススメですよ!

 

 

ということで今回は以上です!当ブログでは個別の銘柄について言及することがありますが、投資を推奨しているものではありません。投資は自己判断でお願いします。

今回も最後までお読み頂き有難うございました!

 

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