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【JAL】20年度第2四半期決算概要!増資も発表で株価暴落。

こんにちは!総合商社マンです!今期赤字見込みのJALが20年度上半期決算を発表したよ!そして公募増資も発表で株価大暴落です。 

 

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JALが20年度第2四半期決算を発表

JALが10月30日に20年度第2四半期の決算を発表しました。第1四半期の決算発表時点では今期の業績予想を算出不可ということで非開示としていましたが、今回の決算発表で年間見通しを公表していますよ。

そして、決算発表の後日である11/6にまさか?の公募増資が発表されてしまいました。このあたりも決算と一緒にどのような内容なのかを見ていきたいと思います。

※当記事内掲載のスライドは全てJALの決算公表資料からの抜粋です。

  

20年度第2四半期決算概要

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JALの20年度第2四半期決算の概要を早速見て行きましょう。第1四半期決算のプレゼン資料は手書きの絵でしたが、今回は厄除けの「アマビエ」が掲載されています。笑

まず定量面から見てみます。こちらのスライドをご覧ください。

 

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ポイントを箇条書きします。

  1. 売上は前年比▲74%減収の1,947億円(1Q時点は▲78.1%減収)。
  2. EBITは前年比▲3,068億円減益の▲2,239億円。
  3. EBITマージン率は前年11.1%から今期は▲115%に悪化。
  4. 純損益は前年比▲2,153億円減益の▲1,612億円(1Qは▲937億円)。

上記は上半期の累計の数字ですが、減収幅は1Qよりも若干改善していますが、まだまだ厳しい状況が続いていますね。

利益面に目を移すと、ここでEBITという小難しそうな言葉が出てきています。会計用語説明記事ではないので詳細は割愛しますが、「Earning Before Interest, Tax」の略で、日本語で言うと「利払い前・税引き前利益」のことです。営業利益のこと?と思うかもしれませんがちょっと違って「EBIT=営業利益+利息以外の営業外損益+特別損益」で計算されます。営業利益+αくらいに思って眺めれば良いかと。金利負担を除いた実力値を見たいときによく使われる指標ですね。

このEBITの利益面についてもう少し詳しく見て行きましょう。こちらのスライドをご覧ください。

 

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このスライドは前年と今期のEBITの差額を要因別に分解して説明したものですね。ポイントを箇条書きします。

  1. EBITは19年度同期は829億円、20年度上半期は▲2,239億円と大幅減益。
  2. 最大の要因は国際便の減収▲2,637億円と国内線の減収▲2,161億円等。
  3. 一方コスト削減の総額は2,520億円で、燃油等の変動費+830億円や固定費の人件費削減で+202億円。
  4. そうしたコストカットの努力をするも減収額を賄いきれず▲2,239億円の赤字転落という構図。

こんな感じですね。ここまで減収が大きいとどんだけコスト削減してもそりゃー赤字になります。ただでさえ航空業界は固定費が高いと言われているので、コロナ禍は本当に厳しいですね。コスト削減についてもう少し見てみましょう。こちらのスライドをご覧ください。

 

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このスライドはコスト削減と投資抑制の取り組みについてまとめたのものですね。ポイントを箇条書きします。

  1. 当初想定では固定費を年間7,000億円で見積もっていたが、今回見通しでは6,000億円に修正、最新見通しからはさらに▲100億円追加削減を実施。
  2. 投資について、当初想定では2,000億円見積もっていたが、今回▲900億円減額の1,100億円とすることを決定。最新見通しからは▲100億円追加削減を実施。

固定費の削減にさらにメスを入れてきていますね。今回対象となっている固定費の削減は「広告宣伝、IT」や「人件費」が含まれています。

また投資については、一部航空機メーカーとの支払い繰り延べ要請や機材の導入後ろ倒しを交渉しているようです。

 

財務状況・キャッシュフロー

JALの財務状況とキャッシュフローを見てみましょう。

まず手元流動性の状況に関するスライドです。こちらをご覧ください。

 

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ポイントを箇条書きしてみましょう。

  1. 前回6月末に比べて、新たにコミットメントライン1,000億円を増額予定とし、合計3,000億円の未使用枠を確保。
  2. キャッシュバーンについては1Qの450億円~500億円/月という状況から150~200億円程度にまで低下。

まずコミットメントラインというのは、銀行からの融資枠ですね。それを積み増すことが出来ています。一方のキャッシュバーンというのは文字通り「現金が燃える」、つまり毎月の現金の流出額のことです。これも落ち着いてきていることが分かります。

超単純計算ですが、9月末時点で手元資金+コミットメントラインは合計で6,466億円(内、1,000億円は予定)ありますので、仮に200億円のキャッシュバーンが続いたとすると2年半は資金繰りに困らない状況です。

この手元流動性の状況下で後ほど後述する公募増資に踏み切ったということです。

また財務状況をまとめたスライドも見ておきましょう。こちらです。

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ポイントを箇条書きします。

  1. 有利子負債総額5,011億円の内、1年以内返済は509億円のみで安心感あり。
  2. 自己資本比率は43.6%と3月末時点から▲7.5%悪化。
  3. DEレシオは3月末の0.3倍から0.6倍へと悪化も1倍を大きく下回る。

自己資本比率は悪化といってもまだ43.6%あり、ANAの30%程度よりは圧倒的に健全と言えます。そしてDEレシオは負債と自己資本どっちが多いかを見る指標ですが、これも悪化しているものの1倍を大きく下回っており、自己資本のほうが多い状況です。

 

20年度年間業績&配当予想

JALの年間業績予想及び配当予想を見ておきましょう。

今回今まで未公表だった年間業績予想を開示しています。こちらです。

 

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ポイントを箇条書きします。

  • 売上は前年比▲56.7%~▲61.8%減収の5,300億円~6,000億円。
  • 当期純利益は▲2,400億円~▲2,700億円の赤字。
  • 国際線は3月末時点で前年比40%程度の回復に留まる。
  • 国内線は3月末時点で前年比80%程度の回復。

このような状況ですね。国際線は12月頃から徐々に増加していく想定となっていますが、足元のコロナ再拡大次第ではこの回復も鈍化する可能性があることには注意が必要です。

尚、配当は1Qで公表済の通り、今期は無配となっています。

 

公募増資について

JALが決算発表をしたのは10/30、そしてその直後の11/6にJALが公募増資を発表しています。私は正直結構サプライズでした。、というのも、ANAと比較してJALの財務状況は先ほど見た通り比較的健全だったからです。例えば自己資本比率は45%あり、ネットDERも1倍を大きく下回る0.6倍という水準ですからね。

これについては以前以下記事でも比較しています。

 

www.sogoshoshaman.com

 

また、もう一つ驚いた理由は、日経のスクープ記事でJALではなくANAが公募増資を検討しているという情報が以前出ていたのでJALではなくANAが先かなと思っていたというのもあります。ちなみにANAのスクープが出た際の情報は以下にまとめていました。

 

www.sogoshoshaman.com

 

今回JALの公募増資では発行済株式数が約30%増加します。言い方を変えると既存株主の保有している株式の価値が約30%希薄化するということです。この公募増資が発表されたのは11/6(金)引け後なので、発表後最初の取引日となった11/9(月)のJALの株価は以下チャートの通り前日比▲10.96%下落で終わっています(一時▲16%まで下落)。

 

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一時▲16%まで下落した株価は1,556円で、これは年初来安値です。下髭を付けて株価が戻したのはチャート的にはポジティブですが、既存株主にはかなりきつい下げとなっていますね。

今回の増資の目的は以下点が挙げられています。

  1. ポストコロナに向けての投資
  2. 有利子負債削減による財務体質の再構築

また今後の株主への利益配分についても以下の記載があります。

利益配分に関する基本方針
当社は、株主の皆さまへの還元を経営の最重要事項のひとつとしてとらえており、将来における企業成長と経営環境の変化に対応するための投資や強固な財務体質構築に資する内部留保を確保しつつ、継続的・安定的な配当に加え、自己株式の取得を柔軟に行うことで、株主の皆さまへの還元を積極的に行う基本方針については、変更する予定はございません。
しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大は、当社グループの業績に大きな影響を及ぼしており、その影響は長期間にわたる可能性があります。また、ポストコロナのニューノーマルにおける社会的ニーズの変化や、航空会社に求められる社会的課題解決に向けた取り組みの強化も想定されております。そのような経営環境下においては、当社グループとしては、変化する経営環境に迅速に対応し、市場競争力を維持向上させ、収益性を強化するための戦略分野への投資と、有利子負債の削減を通じた財務体質の再構築を早期に実現することを最優先としたいと考えております。
したがって、株主の皆さまに対する還元については、将来に向けた再投資のための内部資金の確保、新たなイベントリスクへの耐性強化に向けた手元流動性の拡充と自己資本の回復の進捗度合いを踏まえ、中長期的な利益水準とキャッシュ・フローの状況等を勘案して、目安とする配当性向や自己株式取得を含む総還元性向、株主資本総還元率等を今後決定してまいります。
新型コロナウイルス感染拡大が終息を迎え、日本及び世界の航空需要が回復し、当社グループの業績が回復基調に戻ることを前提に、当社は早期に再び継続的かつ安定的な株主還元の実現に努めてまいります。

※JALのIRページ資料より抜粋

しばらくは「戦略分野への投資」と「財務体質改善に注力」するとあるので、株主還元には期待出来なさそうですね。私個人的には、ノンホルですが、結構残念な内容でした。

 

最後に:国際線の回復が鍵を握る

今回JALの上半期決算を見てきましたが、JALの今期業績予想の前提は3月末に国際線が前年比40%まで回復するというものでした。

今期はもうコロナ禍で決算諦めでコストカットをひたすら頑張るという状況ですが、来期以降の回復にはこの国際線が鍵を握っています。これはもうコロナワクチン次第ということですが、コロナワクチンさえ完成すれば来期の業績期待から株価は反転好調に向かう可能性はありますね。一方でコロナ禍が長引くと、今回の増資もただの有利子負債の返済に回るような状況にもなりかねないので、その点は注意が必要です。

今回の公募増資を見て、私は結構がっかりでしたが、この公募増資が将来の成長に本当に繋がっていくのか、今後もJALの決算を追い続けてみたいと思います。

 

尚、決算書の読み方を勉強したいと思われている方にはこちらの本がおススメです。

 

 

堅苦しくなく、決算書の読み方全然分かりません!という方から、かじったことはあるけど改めて理解したいという初心者~中級者の方向けの本です。私自身も今更ながら改めて読むと頭の整理に繋がって非常に良書でした!

中級者以上だとこちらの本が個人的におすすめかな。 

 

 

先に紹介した本よりはもう少し踏み込んでいて、尚且つ読みやすい良書です!

また、三菱商事を例に挙げて企業分析方法を学べる現役銀行員のたりたり社長という方が書いた良書もありおススメですよ!

 

 

ということで以上です! 

当ブログでは個別の銘柄について言及することがありますが、投資を推奨しているものではありません。投資は自己判断でお願いします。

今回も最後までお読み頂き有難うございました!

 

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