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【三菱商事】個人投資家セミナー開催!累進配当に強くコミット!バフェット砲にも触れました

こんにちは!総合商社マンです!三菱商事がオンラインIR説明会を開催しました!そこで何を語ったのか、気になったポイントをまとめてみたよ!

 

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三菱商事が個人投資家セミナーを開催(2020/9/28)

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三菱商事が個人投資家セミナーをオンライン中継という形で9/28に開催しました。この説明会は楽天証券主催で行われたものですね。

登壇者は以下の通りです。

 

 

◆三菱商事IR説明会◆

日時:2020年9月28日(月)19:40~20:40

内容:企業紹介映像・プレゼンテーション・質疑応答

登壇者①:寺田 達彦氏(三菱商事株式会社 IR部 部長)

登壇者②:肥田 峰子氏(三菱商事株式会社 IR部 次長・シニアマネージャー)

 

冒頭で触れられていましたが、三菱商事の株主に占める個人投資家比率は17%となっているそうです。そうしたこともあり、個人投資家を重視し個人投資家向け説明会を開催しているのですね。

さて、9月頭にバフェットによる総合商社株への投資発表が行われ、注目集まる三菱商事のIRが何を語ったのか、見ていきたいと思いますよ!

会社説明の部分は省き、主に業績動向や、株主還元部分等、私の独断と偏見で気になった部分だけを抜粋しましたので、その点はご了解ください。

個人的には質疑応答部分が踏み込んでいて面白かったです。

 

※ちなみに説明中のプレゼン資料の表示がトラブル発生でぐちゃぐちゃでした。らしくないぞ、三菱商事IR部。笑

 

業績の推移及び今期業績

 

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  • 90年代前半はトレーディング事業を中心としており、利益規模は数百億円だった。そして90年代後半から事業投資を積極化し、利益規模は4,000億円規模まで成長を遂げる。
  • さらに2015年度に一度赤字となるも、その後、現在の事業経営に注力をして5,000億円程度の利益規模に成長。
  • 今期はコロナによるロックダウンや、資源価格の低迷で2,000億円程度となるが、過去から環境変化に応じて柔軟に変化することで持続的な成長を遂げてきた。
  • 2015年の赤字は創業以来初であったが、今期はコロナ禍でも赤字とはならない。これは2015年の赤字以降、ポートフォリオ改革を進めてきた結果である。

 

今期業績がコロナ禍であっても赤字にならない体質となっている点を結構強調している説明内容でしたが、特段スペシャルなことはなく一般情報パートですね。

 

株主還元方針について

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  • 弊社が掲げる累進配当は、揺るがない経営の意思
  • 業績低迷を受けて累進配当に関する懸念の声があるが、今後業績は回復する。
  • 財務健全性、キャッシュフローの観点から問題なし。今後も還元を強化していく。

累進配当についてはかなり強い表現でコミットメントを表明しており、この点は株主にとっては非常にポジティブに捉えて良いと思いました。後ほど出てくる質疑応答でも触れられています。

 

質疑応答

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累進配当について

  • 累進配当は確定させている。来年も変わらない。
  • 2020年度の業績は前年度で落ち込んでいるが、キャッシュフローという観点からは十分なキャッシュを蓄えている。
  • 現状の環境は底の底、鍋底の底という認識。今後はゆっくり改善していくと考えており、心配は必要なし。

「累進配当は確定させている」という表現がいいですね。キャッシュフロー創出にかなりの自信があることを伺わせている内容です。

 

バフェットの投資についてどのように受け止めているか?

  • どのような意図なのかはバフェット氏に聞いてみないと分からないが、我々としてはお金が入ってきたという全体勘としてはポジティブに捉えている。バリュー投資家ということもあり、割安なところを狙って投資をしてきたということ。
  • アメリカのPBRは3倍程度、欧州は1倍台後半、総合商社は0.8倍程度であることを考えると割安であることは間違いない。逆に言うとそれだけ放置されてきたということもある。
  • 初めてバリュー投資家から金が入ってきたことは商社だけに限らず日本にとってポジティブ。バフェット氏は自分の分かる範囲で投資をするということで、総合商社が彼にとって分かり易かったのではないだろうか。
  • また、二つのVがポイント。それはValueとVolatility。中銀からの資金で米国株は高値圏。日本サイドはボラが低いことを考えると日本株で米国株をカバーするということではないか。
  • 長期投資家としては歓迎。バリュー投資家はリターンを求めてくる。我々としては目に見えた形で業績回復、リターン向上を示していく必要があることと認識している。

三菱商事株ホルダーとして、三菱商事がバフェットの投資をどう捉えているのかについて触れてきた点は非常に興味深いですね。是非バフェット率いるバークシャーハサウェイ社との対話をしてもらい、その内容を出来る範囲内で公開してほしいところです。

 

総合商社の優位性は?

  • 他社には言及出来ないが、三菱商事に関しては金属資源、エネルギー。その中でも原料炭、天然ガスは強み。長年やっているのでコスト低減は進んでいる。下落してもバッファーを持っている、これは強みである。
  • もう一つはオランダの電力ソリューション企業のエネコ社。既存でも電力事業は大きいリターンを生んでいるが、エネコへの投資で、今後リニューアルエナジーが20年、30年先の収益源泉になると期待しているし、その認識のもとにポートフォリオを組んだ。
  • 3点目は食品産業。生産から製造、強固なバリューチェーンあり。生産ではセルマックという鮭の生産は世界的に寿司の需要も伸びており成長を続けると考えている。
  • 加えて農産物加工業者オラム。シンガポールを拠点にトレード。これは今後の食品事業のグリップを強める橋頭保になり、さらなる発展を期待している。加えて中間流通のトップである三菱食品も強み。

これは一般的な情報ですね。やはり三菱商事の強みは資源です。潔くていいかもしれない。笑

 

千代田化工の今後の取り組み状況は?

  • 北米で進めていたLNGプラント建設プロジェクトについては、先月工期が全て完工し生産スタート。工事は順調で、リターンも順調に反映してきている。人を送り込み、再生し、復活している。既存案件は順調。
  • 今後は、新規プロジェクトを取っていけるのかが鍵となる。コロナの影響で案件そのものが遅れ気味となっているが、足元は復活の動きも出てきている。今後を楽しみにしてもらいたい。

最後に「今後を楽しみにしてもらいたい」と言っているところにが自信の表れですね。笑

 

石炭の販促とESGの精神をどう両立していくのか?

  • 石炭といっても色々ある。従来は原料炭と一般炭、両方取り扱いしていた。現在はESGの観点から一般炭(発電用の石炭)は昨年全て売却し、脱炭素の動きをしている。
  • 一方の原料炭は鉄を溶かす素材であり、ここは引き続きしっかりビジネスをしていく。
  • ESG、環境という長期の目線でいくと、電力ソリューションにおいて風力発電を進めている。30~50年という長い期間を見据えて、既に始めている。

一般炭は火力発電に使われて二酸化炭素出しまくるやつ、原料炭は鉄の製造に欠かせないものなので、三菱商事は後者の原料炭に注力していくということですね。

 

再び商社トップに返り咲く戦略は?

  • もともと中期経営戦略でDXを掲げたが、既存ビジネスとミックスで投資のリサイクルを進めている。資産を拡大していくという方針ではなく、良いものあれば投資、終わりそうなものはやめていくというスタイル。
  • そう意味ではコロナ前も今もスタンスは変わらない。
  • コロナの部分は今後回復していくだろう。時間は少しかかるかもしれないが(4,5月が底だった)、原料炭、食品等のビジネスは、ビフォアー、アフターコロナで特に変わらないと捉えている。
  • 業績は回復してくる、そのあたりはお楽しみに。

いい質問をピックアップしてくれましたね。笑 ただ、回答はちょっと回りくどかった印象です。ただ、ここでも最後に「今後をお楽しみに」という主旨の発言をしており、今後の業績回復に自信を見せている印象を受けました。

 

中期経営戦略2021の利益面の目標は変わったか?

  • 利益水準のターゲットは厳しい状況だが、やることをやっていくのみ。
  • コロナのせいでターゲットを目指す時間軸が変わっているという認識。バランスシートの健全性は保っていくし、やれることをやっていく。

「利益面の目標」というのは、三菱商事の現在進行中の中期経営戦略2021では、最終年度にあたる2020年3月期の業績目標を9,000億円、年間配当200円/年を掲げいました。この方針に変化はあるのか?という質問ですね。

さすがにコロナの状況下でこれは難しいでしょうが、「時間軸が変わる」ということは将来的にはこの水準を目指そうとしている、と私は捉えました。

 

 

同業他社に株価・時価総額を抜かれている事に関しては?

  • よく外部から聞かれることだが、他社のことは気にしていない。今やらなければいけないことをやっていく。

グサっと刺しにいく質問ですねー、まさかこんな質問を自ら取り上げるとは思いませんでした。笑 ただ、絶対気にしているのは間違いないですが「気にしていない」と大人の回答です。

ま、投資家側からすると「気にしろよ、株価追い抜けよ」というのが本音ですが。笑

 

自社株買いについては?

  • 昨年3,000億円の自社株買いを行った。しっかり還元をしているという認識。
  • 今後については引き続き、必要な時に必要な量をやっていくというスタンス。

今後も自社株買いを行っていく可能性があることを匂わせる一般的な回答に留まりましたね。

 

三菱自動車は厳しい状況だが?

  • 現在20%の株主でいろいろな地域で事業をやっている。事業方向転換で東南アジアに集中することで大きな損失が出る見込み。
  • 目線をあげて中長期という方向で見ると、自工がそのように事業を整理していくということを考えると、いい方向だと考える。
  • タイではいすゞ、インドネシアでは自工。自工は東南アジアに集中するという意味では三菱商事の東南アジアでの強みも活用出来てシナジーを出せる。今年度は厳しいが将来を見据えると期待できる。

今期かなり足を引っ張っているのがこの三菱自工なわけですが、今が最悪期で、来期以降は業績に貢献をしてくることを三菱商事としては期待しているようですね。

 

本日発売のダイヤモンドに関しては?

  • メディアはメディアの見方で話をしている。弊社は当事者としてコメントすることはありません。
  • それぞれのスタンスでそれぞれの見方があるが、我々は出来ることをやっていく。社員の質を上げ、株主還元もしっかりやっていく。外からの声に耳を傾けることでもない。

これは何かというとこちらの雑誌のことに関してですね。笑

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三菱財閥の特集を組んだ週刊ダイヤモンドの雑誌記事に関しての質問です。結構この中で三菱グループのことを辛辣に書いてあるので、読んでみても面白いかもしれませんが、回答は「ノーコメント!」でした。笑 ま、そらそうですね。笑

 

資源価格の今後の見通しは?

  • LNG、原料炭、鉄鉱石、銅の価格について。
  • まず、LNGは油価見通しをメジャーが引き下げしたり、それが需要減退をイメージしているのか、等議論ある。一方、第三者機関では全く変えていないところもあり、見通しは錯そうしている。その中で三菱商事は中長期ではドバイベースで70ドル台と見ている。
  • 原料炭はディスクロージャーの関係から現時点でコメントできない。
  • 鉄鉱石、銅はコロナ前の価格を戻し、高値圏に抜けつつある。需給バランスでいうと、鉄鉱石は主要産地が南米、輸入先は中国という構造。中国はOKだが南米がコロナで出荷が出来ないという需給バランスで上がっている。
  • 原料炭はコロナの影響でインド等需要の戻りが遅い。生産側の豪州は順調。ただし、鍋底の底と先ほど言ったが、3Q頃からは景気回復、モノの値段、物流も回復すると見ており、我々も一安心という状況。

さほど資源価格に三菱商事としては悲観的にはなっていないようですね。業績回復期待が高まります。

 

最後に:累進配当へのコミット力が素晴らしい

今回三菱商事がIR説明会をオンラインという形で開催したわけですが、特に個人的に目を惹いたのは累進配当への強いコミットメントでした。

「累進配当は揺るがない経営の意思」っていい言葉ですね。

ただ、もちろん今後の業績回復が実現しなければ、今すぐではないにしても、いつかは累進配当にも限界が来ることになるので、毎期の三菱商事の業績動向には注意を払う必要があります。

また、もう一つ評価したいと思ったのは、三菱商事側からしたらあまり触れて欲しくない視聴者からの質問(例えば同業他社に業績抜かれたこととか)を自ら取り上げていた点ですね。笑 結構聞いていて面白いセミナーでした。

一点、辛口を言うと、全体を通して感じたのが、結局資源価格が戻れば業績回復するし、戻らなければ赤字にはならないにしても業績低迷する事業体質だなと感じたことです。この点を事業経営という観点からどう今後マネージしていくのか、三菱商事に期待したいと思います。

 

ちなみについ先日、三井物産も個人投資家向けのIR説明会を開催していましたよ(詳細は以下記事)。

 

www.sogoshoshaman.com

 

総合商社の事業内容は複雑多岐に渡るので、もちろんこうした決算説明会だけで内容を理解するのは不可能である一方、事業内容を理解してもらえるきっかけにはなると思うので、定期的にこのようは説明会を開催することは個人投資家には歓迎です。

 

さて、今週から10月相場入りとなり、いよいよ月末からは第2四半期決算発表シーズンがスタートします。今期は王者の地位を伊藤忠商事に譲り渡す公算が高い状況ですが、三菱商事が王者に返り咲く日を、いち投資家として期待しています!

 

尚、総合商社各社の最新決算状況は以下記事に纏めてありますので興味がある方は御覧ください。

 

www.sogoshoshaman.com

  

また、決算書の読み方を勉強したいと思われている方にはこちらの本がおススメです。

 

 

堅苦しくなく、決算書の読み方全然分かりません!という方から、かじったことはあるけど改めて理解したいという初心者~中級者の方向けの本です。私自身も今更ながら改めて読むと頭の整理に繋がって非常に良書でした!

中級者以上だとこちらの本が個人的におすすめかな。 

 

 

先に紹介した本よりはもう少し踏み込んでいて、尚且つ読みやすい良書です!

 また、三菱商事を例に挙げて企業分析方法を学べる現役銀行員のたりたり社長という方が書いた良書もありおススメですよ!

 

 

ということで以上です!

当ブログでは個別の銘柄について言及することがありますが、投資を推奨しているものではありません。投資は自己判断でお願いします。

今回も最後までお読み頂き有難うございました!

 

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